天使の涙


「ただいまー!!」


夕方の五時を過ぎた頃、一階から畑山先生の大きな声が響いて来た。ただいま、と叫んでも返事をする人はいないのに。私は部屋から顔を出して階段下にいる彼を見て、おかえりなさいと小さく言った。


「お土産にメロンあるけ、食べん?」


「……」


階段を下りてリビングに行くと、網の掛かった高級そうなメロンを自慢げに抱えた畑山先生が仁王立ちしていた。
黒いスーツに黒いネクタイ、ワックスでがっちり固めた髪の毛。その姿にメロン…かなり可笑しい組み合わせ。

「お葬式か何かだったんですか?」


「んー?まぁ…似たようなもんよ。それよりメロン!こりゃ美味しいに違いないっちゃー。きっと食べたらメロンメロンやで」


「……はぁ」


黙ってれば格好良いのに、喋るとただのオッサン。彼女がいないのも何となく頷ける。


メロンを半分に切り分け、それを皿に乗せてテーブルに運び、ソファーに二人並んで腰掛けた。


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