天使の涙



怖くないと言えば嘘になる。今すぐ逃げ出したい気持ちはやまやまなんだけど…


「…震えてる」


「いかんよね、わかっとる。こんなんじゃ全然駄目なんは…わかっとるのに…怖いんは俺の方や」


何が¨駄目¨なのか、なにが¨怖い¨のかは分からない。それを聞くことすら拒否されてしまった今、私に出来ることはただこうしてジッとしていること。


「泣いてもいいですよ」


なんて、大人ぶった言葉を言いながら先生の頭を遠慮がちに触ると、彼は驚いたように目を丸くした。そして



「……ア、ホ。ドラマの見すぎやで。んなこと言われて泣けるやつは誰もおらんちゃ」


涙を浮かべて、とても不器用に笑った。




・つづく・
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