天使の涙


「………ごめん、なさい先生」


ジャージ姿で出て来たこの男の人は、ここの子供たちの面倒を見てくれている役員の一人。名前は畑山千宏。年は三十二歳。


教員の免許を持っていて、ここの引き籠もっている子供たちに個別で勉強を教えてくれている。


「次からはちゃんと言いよ。事故にでもあったら大変やけね」


「はい」


畑山先生はニッと笑ってそのまま奥の部屋に戻って行った。今まで色んな役員を見て来たけど、彼のように接してくれる人は初めてだった。


絶対に私の領域に深く踏み込んで来ないし、身体に触れられるのが嫌いだってことを教えてもいないのに理解してくれている。それに嫌なことは一切聞いて来ない。


「…………楽だ」


この施設は居心地が良い。ここなら上手くやって行けそうな気がする。



夕ご飯を部屋で済ました後、私は一人で外に出た。辺りはすっかり暗くなっていて、空には猫の爪みたいな三日月と、満天の星たちがキラキラと輝いている。


都会ではネオンが邪魔をして空の星たちを隠してしまうけど、ここではプラネタリウムみたいな絶景が見れるんだ。


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