ラストバージン
てっきりカフェやレストランに行くのかと思っていたから、正直なところ何だか拍子抜けしてしまったけれど……。
「本当にこんな物でよろしいんですか?」
困惑の笑みを浮かべながら確認し、榛名さんと自動販売機を交互に見た。
「はい。僕、このメーカーのココアが好きなんですよ」
彼は迷う事なくニッコリと頷き、自動販売機に並ぶブラウンの缶に【COCOA】と表記された物を指差した。
少しだけ悩み、肩透かしを喰らったような気分になりながらも微笑む。
「わかりました」
昨年末の冬のボーナスで買ったばかりの有名ブランドの長財布を取り出し、自動販売機に五百円硬貨を入れてココアのボタンを押す。
直後にガコンと音を立てて落ちて来たそれを、榛名さんに笑顔で差し出した。
「どうぞ」
「ありがとうございます」
「いえ」
再び自動販売機に向き合い、わりとよく飲んでいるコーヒーのボタンに指を乗せようとしたけれど……。ふとその手を止め、一瞬悩んだ後で右隣に並ぶココアのボタンを押した。
落ちて来たココアの缶と硬貨を取り、さっきまでよりも冷たくなった風に首を竦めながら振り返る。
すると、榛名さんがフワリと微笑んだ。
「本当にこんな物でよろしいんですか?」
困惑の笑みを浮かべながら確認し、榛名さんと自動販売機を交互に見た。
「はい。僕、このメーカーのココアが好きなんですよ」
彼は迷う事なくニッコリと頷き、自動販売機に並ぶブラウンの缶に【COCOA】と表記された物を指差した。
少しだけ悩み、肩透かしを喰らったような気分になりながらも微笑む。
「わかりました」
昨年末の冬のボーナスで買ったばかりの有名ブランドの長財布を取り出し、自動販売機に五百円硬貨を入れてココアのボタンを押す。
直後にガコンと音を立てて落ちて来たそれを、榛名さんに笑顔で差し出した。
「どうぞ」
「ありがとうございます」
「いえ」
再び自動販売機に向き合い、わりとよく飲んでいるコーヒーのボタンに指を乗せようとしたけれど……。ふとその手を止め、一瞬悩んだ後で右隣に並ぶココアのボタンを押した。
落ちて来たココアの缶と硬貨を取り、さっきまでよりも冷たくなった風に首を竦めながら振り返る。
すると、榛名さんがフワリと微笑んだ。