ラストバージン
「コーヒーがお好きなんだと思っていましたけど、もしかしてココアの方がお好きなんですか?」

「どちらも好きですよ。ただ、寝る前にコーヒーを飲むと眠れなくなるので、その時だけはココアにしているんです」

「あ、私もです。眠気覚ましにはいいんですけどね」

「それに僕の場合、子どもの頃に冬になるとよく寝る前にココアを飲んでいたので、何となくその習慣が残っているみたいで……。冬はココアを飲まないと、寝付きが悪いんです」


困ったように微笑む榛名さんが眠る前にココアを飲む姿を想像すると、自然と頬が緩んでフフッと笑っていた。


「あ、ガキだって思ったでしょう?」

「違います。可愛いな、って思っただけです」

「それ、ガキだって言っているようなものですよ」


正直な気持ちを告げた私に、榛名さんが眉を寄せて微笑む。
その様子がおかしくてクスクスと笑うと、私を見つめていた双眸が更に柔らかく緩められた。


「結木さんは、看護師が天職なのかもしれませんね」


この間、話の成り行きで看護師をしている事は告げたけれど、あまりにも唐突な言葉にキョトンとしてしまって……。

「え?」

反応がつい一瞬遅れてしまうと、榛名さんが楽しげにフッと笑った。

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