ラストバージン
「結木さんみたいな看護師さんがいてくれたら患者さんは癒されるだろうな、と思って」

「そんな……」


恥ずかしさと嬉しさに心がくすぐったくなって、榛名さんからパッと顔を逸らす。


「結木さんの事はまだよく知らないですけど、この間と今日話していてそんな気がしたんです」

「買い被り過ぎですよ。私、全く癒し系じゃありませんから」

「それは、ご自分の魅力をわかっていないだけですよ。結木さんは見た目はしっかり者って感じがしますが、話しているとホッとするし癒されます」


「少なくとも僕はそうです」と付け足した榛名さんの言葉は嬉しいけれど、こんな風に言われるとどんな顔をすればいいのかわからなくなる。
寒さのせいで頬に熱が集まるのがよくわかって、僅かな月明かりと街灯しかない状況に安堵した。


「褒め過ぎです……。そんなに褒めて下さっても、何も出ませんよ」


眉を小さく寄せて困惑の笑みを浮かべる私に、榛名さんがニコニコと笑う。
その表情の真意は読めないけれど、私よりも彼の方がずっと癒し系だと思った。


ただ、それを言葉にするのは何だか戸惑ってしまって、込み上げて来る色々な感情をココアと一緒に流し込んだ。

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