ラストバージン
「看護師になったばかりだし、慣れない環境だし、余裕がないのはよくわかる。私もそうだったから」


真剣な表情になった矢田さんに、彼女の成長が一つ見えたような気がする。


「でもね、看護師はどんな時でも患者さんの前では笑顔でいる事。学校でも習ったでしょう? これが、初歩の初歩よ」

「はい」

「それから、わからない事は自分からどんどん訊きなさい。同期でも、酒井さんでも、私でも構わない。質問するのは勇気がいるかもしれないけど、どんな些細な疑問でもその場で解決出来るようにしなきゃダメ」

「はい」

「わからない事をわからないままにしていたら、学生の頃よりも取り返しが付かなくなるから」


こんなにも真剣に耳を傾ける矢田さんを見た事がなくて、そんな彼女の内面をこの一ヶ月間で引き出せなかった自分の力量のなさを反省した。


「どんなに疲れていても、その日疑問に感じた事は必ず復習しなさい。その代わり、休日はリフレッシュしたりしっかり休む事」

「え?」

「緊張感に包まれている職場だから、休日は自分を解放してあげてストレスを発散するべきだし、休める時には休む事が必要なのよ」


ニッコリと笑うと、矢田さんの表情が少しだけ和らいだ。

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