ラストバージン
「ところで、榛名さんのチョイスってどうしていつも生き物がいる場所ばかりなの?」


五月と六月にはそれぞれ動物園と植物園に行ったし、それ以外の時にはペットショップや猫カフェに立ち寄った事もある。


「あ、実は嫌だった?」

「ううん、動物園は楽しかったし、植物園も癒されたよ。でも、どうしてそういうチョイスなのかと思って」


怪訝な顔を見せると、榛名さんが瞳を緩めた。


「それだよ」

「え?」

「癒し、ってやつかな」


榛名さんは意味深に答えて、ニコニコと笑った。


「生き物ってさ、結構癒されない? 映画とかショッピングも楽しいしリフレッシュ出来るんだけど、癒しとはまた違うと思うんだ。でも、動物でも植物でも、生き物って癒しがあると思わない?」

「うん、癒される」

「ペットを飼いたいけど忙しくて傍にいられないだろうから、そんな家に来させるのは可哀相だし……。動物園も植物園も水族館も男同士じゃ中々行かないから、普段はペットショップを覗く程度なんだけど、女性とならどれも気兼ねなく行けるしね」


〝女性となら〟という言葉が頭の中でリピートされて、何だかくすぐったくなってしまう。
その相手に自分を選んだ貰えた事が、素直に嬉しかった。

< 189 / 318 >

この作品をシェア

pagetop