ラストバージン
見慣れたマンションが徐々に姿を現し、後もう少しで着く。
そんな時、右隣りを歩いていた榛名さんが足を止めた。
「……どうしたの?」
すぐに気付いた私は、不意の事に怪訝に思いながらも振り返って微笑む。
そんな私の瞳をじっと見つめた榛名さんは、程なくしてゆっくりと口を開いた。
「ところでさ……」
「うん?」
脈絡のない切り出しに、笑みを浮かべたまま小首を傾げる。
すると、榛名さんは僅かに緊張したような面持ちになった。
「僕達、そろそろ付き合ってみない?」
夜風に乗せられた台詞が私の耳に届いたけれど、それを理解するまでに何秒もの時間を要してしまって……。
「…………え?」
散々待たせた挙げ句、自分の口から漏れたのはたったの一文字だった。
「えっ……えっと……あの……」
視線をキョロキョロと彷徨わせる私は、どう見ても挙動不審な女。
そんな私を見つめたままの榛名さんが、どんな顔をしているのかがわからない。
〝そろそろ〟という事は、もうずっと前から考えてくれていた事だったのだろうか。
パニックになっている頭の中で考えてしまったのは、今はどうでもいいような事だった。
そんな時、右隣りを歩いていた榛名さんが足を止めた。
「……どうしたの?」
すぐに気付いた私は、不意の事に怪訝に思いながらも振り返って微笑む。
そんな私の瞳をじっと見つめた榛名さんは、程なくしてゆっくりと口を開いた。
「ところでさ……」
「うん?」
脈絡のない切り出しに、笑みを浮かべたまま小首を傾げる。
すると、榛名さんは僅かに緊張したような面持ちになった。
「僕達、そろそろ付き合ってみない?」
夜風に乗せられた台詞が私の耳に届いたけれど、それを理解するまでに何秒もの時間を要してしまって……。
「…………え?」
散々待たせた挙げ句、自分の口から漏れたのはたったの一文字だった。
「えっ……えっと……あの……」
視線をキョロキョロと彷徨わせる私は、どう見ても挙動不審な女。
そんな私を見つめたままの榛名さんが、どんな顔をしているのかがわからない。
〝そろそろ〟という事は、もうずっと前から考えてくれていた事だったのだろうか。
パニックになっている頭の中で考えてしまったのは、今はどうでもいいような事だった。