ラストバージン

* * *


榛名さんとの約束を三日後に控えた八月上旬、夜勤明けの足で自宅とは反対方向にある恭子の家に向かった。


アイボリーの外壁が迎えてくれる、二階建ての新築。
インターホンを押すと、すぐに玄関のドアが開いた。


「葵!」

「恭子、久しぶり」


私の顔を見た瞬間に満面に笑みを浮かべた恭子に、負けじと飛び切りの笑顔を向ける。


「会いたかったー!」

「私も」

「暑かったでしょ? 早く中に入って」

「うん、お邪魔します」


綺麗な玄関と廊下を抜け、リビングに案内される。
すると、ゆりかごの中にいる正に天使のような恭平(きょうへい)君の姿が、視界に飛び込んで来た。


「うわぁ、すっかり大きくなったね。相変わらず可愛い」

「でしょ? きっと、うちの子が一番可愛いよ」


誇らしげに笑って親バカ振りを発揮している恭子に、思わずクスクスと笑いながらも頷いた。


仕事柄、院内で新生児や乳児を見掛ける事もあるけれど、リハビリ科病棟にいる私が関わる事はまずない。
赤ちゃんというだけで無条件に可愛く思えるし、院内で見掛ける度に癒されてはいるものの、やっぱり友達の子どもとなれば可愛さは倍増だった。

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