ラストバージン
トクンと跳ねた胸の奥に芽生えたのは、焦れったいような感情。


それが何なのかこの時はわからなくて、それよりも気になっている事を訊きたくて……。

「あの……」

頬を濡らす涙を拭い、日高先生を見上げた。


「ん?」

「私が泣いている事、どうして……」


私の瞳を真っ直ぐ見つめ返した日高先生は、瞳を柔らかく緩めている。


「ここ、僕の休憩所だったんだ」

「え?」

「ここに来てすぐに見付けた場所でね、誰の目にも留まらないところが気に入ってよく足を運んでいるんだけど、三ヶ月程前から君が来るようになった」


三ヶ月程前と言えば、ちょうどこの場所を見付けた頃だったはず。
今にも零れそうだった涙を隠そうと、咄嗟に【職員以外立入禁止】と書かれたプレートに吸い寄せられるように非常階段のドアを開け、用心深く屋上まで上がったのだった。


「時々は使われるとは言え、職員以外は立入禁止。しかも、ここまで上がって来るような用事は誰もないだろうと思っていたんだけど、三ヶ月程前からは先客がいる事が多くてね」

「あっ、私……。すみませんでした……」


私を見下ろす日高先生に、暗に邪魔だと言われているような気がして慌てて頭を下げた。

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