ラストバージン
壁を背にした私の左側の頬に、日高先生の親指がゆっくりと這う。
その感覚に囚われていると、今度は右側の頬に柔らかな温もりを感じた。
それが唇だと感じるまでに大した時間は掛からなくて、親指と同様に涙を拭ってくれているのだと理解した時には、既に日高先生に瞳を奪われていた。
「葵、泣かないで……」
心は懇願するような顔に惹かれ、しょっぱさの残る唇は近付いて来る唇を素直に受け入れた。
日高先生との初めてのキスは、ほんのりと涙の味がした。
触れるだけだった唇が離れた直後にはまた重なり、まるでそれしか知らないかのように何度も何度も繰り返す。
涙の味が唇から消えた頃、私達はようやくキスをやめた。
「涙、止まったみたいだね」
悲しみはまだしっかりと残ったままなのに、こんな時にドキドキしている自分に罪悪感を抱いて……。
「お願いだから、もう泣かないで。君がいつか壊れてしまいそうで、何だか恐いんだ」
それなのに、日高先生の言葉に熱くなった胸の奥は、次第に彼だけしか見えなくする。
(こんな時に、しかも職場でキスをするなんて……)
自分のいる状況に動揺する反面、日高先生に抱き締められる体から感じる温もりに、私は確かに救われていた。
その感覚に囚われていると、今度は右側の頬に柔らかな温もりを感じた。
それが唇だと感じるまでに大した時間は掛からなくて、親指と同様に涙を拭ってくれているのだと理解した時には、既に日高先生に瞳を奪われていた。
「葵、泣かないで……」
心は懇願するような顔に惹かれ、しょっぱさの残る唇は近付いて来る唇を素直に受け入れた。
日高先生との初めてのキスは、ほんのりと涙の味がした。
触れるだけだった唇が離れた直後にはまた重なり、まるでそれしか知らないかのように何度も何度も繰り返す。
涙の味が唇から消えた頃、私達はようやくキスをやめた。
「涙、止まったみたいだね」
悲しみはまだしっかりと残ったままなのに、こんな時にドキドキしている自分に罪悪感を抱いて……。
「お願いだから、もう泣かないで。君がいつか壊れてしまいそうで、何だか恐いんだ」
それなのに、日高先生の言葉に熱くなった胸の奥は、次第に彼だけしか見えなくする。
(こんな時に、しかも職場でキスをするなんて……)
自分のいる状況に動揺する反面、日高先生に抱き締められる体から感じる温もりに、私は確かに救われていた。