ラストバージン
その日をキッカケに、私は少しずつ泣く回数が減っていった。


患者さんの死に立ち会う度に、涙が零れる事は避けられなかったけれど……。それでも、日高先生が恋人という特別な存在になってからは悲しみを上手く消化出来るようになり始めたのか、昨年の四月からの一年間に零した程の涙は出なくなった。


泣いてばかりだった私にとっては、とても大きな進歩。
悲しみに負けそうになっても日高先生が支えてくれる事が、私にとっては何よりも心強かった。


「最近、忙しいみたいですね?」

「外科部長に、学会の手伝いをさせられていてね」


職場から車で十五分程の場所にある私の部屋のベッドの上で、下着だけを身に着けた日高先生がタバコを片手に疲れた表情を見せた。


「今日も、またすぐに病院に戻らないといけないんだ」

「そうなんですか……」

「寂しい、って顔してるね」


眉を下げた私に、日高先生が瞳を緩める。


「だって、義成さんとあまり一緒にいられないから……」

「ごめんね。落ち着いたら、葵との時間を優先するから」


そんな風に言って貰えると寂しいなんて口には出せなくて、「それで許して」と微笑む日高先生を見つめながら小さな笑みを浮かべた。

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