ラストバージン
「……なん、でっ……!」


いくら考えてみても、どうしてこんな事になってしまったのかという疑問は一向に解けない。
こんなにもつらいのに、思い出すのは楽しかった日々の事ばかり……。


助手席のドアを開けてエスコートしてくれた車で、よく私の部屋までドライブをした。


二人で使うには狭いこのベッドで、日高先生と何度も抱き合った。
時には夜遅くに訪ねて来た彼が、そのまま泊まって行った事もあった。


日高先生はもちろん、私もそれなりに忙しい日々を送っていたから、過去の恋愛の時のように外でデートをする事はなかったけれど……。それでも、彼と付き合ってからはたくさんの時間を共有して来た。


それに、左手の薬指に指輪をしていない日高先生が結婚しているなんて、一度だって考えた事はなかった。
何より、彼自身からそんな話を聞いた事がなかったのだから……。


こんな現実を一人で抱え込むのは、あまりにもつらい。


だけど……誰かに話を聞いて欲しいと思っても、誰かに縋り付きたくても、握り締めたスマホをどこにも繋ぐ事は出来ない。


だって……不倫をしていた、なんて。
そんな有り得ない事実を、友達にも親にも言えるはずがないのだから……。

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