ラストバージン
翌日の昼過ぎ、一度実家に戻ってから帰るという恭子を送り出そうとすると、彼女は私の瞳を真っ直ぐ見つめた。


「これから、どうするつもり?」


きっと、恭子も私が今の職場にはいられないだろうという事をわかっていて、だからこその言葉だったのだろうけれど……。

「……わからない」

今の状態で、これからの事を考える程の余裕はなかった。


看護師は続けたいけれど、母校の附属病院という事で簡単に就職出来た今の職場を辞めて、同じような大病院に就職する事は可能なのだろうか。


求人の多い職業だから、どこでもいいのなら就職は出来ると思う。
ただ、看護師としての経験を少しでもたくさん積む為には、出来るだけ大病院で働く必要がある。


学生時代からずっと、出来る限りの経験を積みたいと考えている私は、分相応であっても今と同等の病院で働きたかった。


「うちの病院、求人してるよ」

「え?」

「葵が今の職場を辞めるつもりでいるなら、面接を受けてみたら? うちも今のところと同じくらいの設備だし、きっと葵も納得出来ると思うよ。その代わり、引っ越さないといけないけど……」


最後にデメリットを付け足した恭子は、「心機一転は出来るんじゃない?」と微笑を浮かべた。

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