ラストバージン
程なくして立ち去った恭子に、きちんとした返事は出来なかったけれど……。彼女の話を聞いた直後に、心は決まっていたような気がする。
奇しくも、恭子の職場は私の実家がある県内に位置していて、ある意味でそれも決め手となった。
五年を目処に辞めて地元に帰って行く先輩を見て来たし、私も今年度で看護師になってからちょうど五年目を終える。
面接での言い訳に出来そうだったし、実家の近くに戻る言い訳にもなるだろう。
それに……日高先生との思い出が詰まっているこの部屋に住み続けるのは、今の私には無理そうだった。
色々なタイミングが重なった事もあって、恭子が帰った三日後には職場に退職願を提出し、ロッカーの荷物を持ち帰った。
師長に頼んでスタッフの少ない夜勤の時間帯に足を運んだものの、院内にいたスタッフからの好奇の目に曝されて居心地が悪く、退職する事を決めて良かったのだと思えた。
日高先生と会う事はなかったけれど、お互いにとってその方が良かったはず。
だけど、どんなに頑張っても、彼の事を忘れられる気がしない。
(もう、恋なんてしない……)
その一ヶ月後に引き払った空っぽの部屋を最後に見た時、私は心の中でそんな事を思っていた――。
奇しくも、恭子の職場は私の実家がある県内に位置していて、ある意味でそれも決め手となった。
五年を目処に辞めて地元に帰って行く先輩を見て来たし、私も今年度で看護師になってからちょうど五年目を終える。
面接での言い訳に出来そうだったし、実家の近くに戻る言い訳にもなるだろう。
それに……日高先生との思い出が詰まっているこの部屋に住み続けるのは、今の私には無理そうだった。
色々なタイミングが重なった事もあって、恭子が帰った三日後には職場に退職願を提出し、ロッカーの荷物を持ち帰った。
師長に頼んでスタッフの少ない夜勤の時間帯に足を運んだものの、院内にいたスタッフからの好奇の目に曝されて居心地が悪く、退職する事を決めて良かったのだと思えた。
日高先生と会う事はなかったけれど、お互いにとってその方が良かったはず。
だけど、どんなに頑張っても、彼の事を忘れられる気がしない。
(もう、恋なんてしない……)
その一ヶ月後に引き払った空っぽの部屋を最後に見た時、私は心の中でそんな事を思っていた――。