ラストバージン
「私ね……」


榛名さんは私の僅かな変化も見逃さないと言わんばかりに、瞳をじっと見つめている。


そのひたむきさに怯みそうになり、視線を逸らしてしまいそうだったけれど……。

「数年前まで、違う病院で働いていたの」

グッと堪えて榛名さんを真っ直ぐ見つめ返し、自分の過去を声にした。


彼からしてみれば、きっと脈絡がないように思える話。


「……うん」


その繋がりを考えるような表情を浮かべた榛名さんは、怪訝そうにしながらも相槌を打った。


「母校の附属病院で、それなりに有名なところだったんだけどね……」


どうでもいい前置きをしてしまうのは、これから告げる真実に対する反応を知るのが恐かったから……。


今までに過ごして来た時間を思い返して戸惑い、今ならまだ誤魔化せるとも思ってしまった私は、やっぱり狡いのだろう。
そんな気持ちを押し込める為に、改めて意を決する。


ただ、逃げ道がなくなったせいで榛名さんの顔をどうしてもまともに見る事が出来なくなって、せめて彼の瞳から逃げるように小さく俯いた。


「そこで知り合ったドクターと、不倫……してた……」


そして、過去に犯してしまった罪を、震えそうになる声で紡いだ。

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