ラストバージン
「……正直、めちゃくちゃ驚いた」


ポツリと呟いた菜摘は、カフェオレのストローに口を付けた。


「前の病院を辞めたのは恋愛系が原因かな、とは思っていたけど……。葵と不倫って全然結び付かないから、さすがに今までで一番ビックリしたって言うか……。まだ、ちょっと信じられないよ」


彼女がため息をつき、苦笑を零した。


「でも、軽蔑はしてない」

「……どうして? 普通は軽蔑しない?」

「だって、葵は相手が既婚者だって知らなかったんでしょ?」

「そんな言い訳を信じてくれるの……?」

「え? 嘘なの?」


瞳をぱちくりとさせた菜摘に、首を小さく横に振る。


「違うけど……。だって、九ヶ月間も付き合っていた相手が既婚者だって知らなかったなんて言い訳、疑われても仕方ないと思うし……」

「他の人は疑うかもしれないけど、私は疑わないって。大体、葵はそんなつまらない嘘はつかないでしょ?」


「そんなのよく知ってるよ」と笑った菜摘の表情が、ほんの少しだけ呆れたものに変わる。


「まぁ、九ヶ月間も付き合ってたのに既婚者だって気付かなかったなんて鈍臭いなぁ、とは思うけどね」


そして、冗談混じりの声音で小さく笑った。

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