ラストバージン
「普通気付くでしょ? 指輪とか、雰囲気とか、あんまり連絡が取れないとか……。こっちから連絡しちゃダメ、とか言われなかった?」
「指輪はしてなかったから……」
今だからこそ思う事だけれど、外科医の中でも特に執刀する事が多かった日高先生なら指輪をしていなくても不思議じゃない。
「雰囲気は見落としていたのかもしれないけど、出会ってから付き合うまでの間に結婚してるなんて聞いた事もなかったし……。それに、とにかく忙しい人だったから連絡が取り難いのも不思議に思わなかったし、私から連絡しちゃダメなんて言われた事もなかったよ……」
「……それ、相手は最初から故意だったんじゃない?」
「え?」
「葵の事が気になっていたから、わざと既婚者だって事を隠していたんじゃないの?」
目を小さく見開いた私に、菜摘は眉を寄せてそう言った。
頬杖を付く彼女の表情には、苛立ちがあらわになっている。
「確信犯だったのかもよ。そもそも同じ社内であっても、プライベートの事なんて余程の内容じゃないといちいち広まらないじゃない? 相手が既婚者だって気付かれないようにしていたなら、葵が気付かなかったのも仕方ないんじゃない?」
菜摘の言葉を反芻していく中で、ふとある事に気付いた。
「指輪はしてなかったから……」
今だからこそ思う事だけれど、外科医の中でも特に執刀する事が多かった日高先生なら指輪をしていなくても不思議じゃない。
「雰囲気は見落としていたのかもしれないけど、出会ってから付き合うまでの間に結婚してるなんて聞いた事もなかったし……。それに、とにかく忙しい人だったから連絡が取り難いのも不思議に思わなかったし、私から連絡しちゃダメなんて言われた事もなかったよ……」
「……それ、相手は最初から故意だったんじゃない?」
「え?」
「葵の事が気になっていたから、わざと既婚者だって事を隠していたんじゃないの?」
目を小さく見開いた私に、菜摘は眉を寄せてそう言った。
頬杖を付く彼女の表情には、苛立ちがあらわになっている。
「確信犯だったのかもよ。そもそも同じ社内であっても、プライベートの事なんて余程の内容じゃないといちいち広まらないじゃない? 相手が既婚者だって気付かれないようにしていたなら、葵が気付かなかったのも仕方ないんじゃない?」
菜摘の言葉を反芻していく中で、ふとある事に気付いた。