ラストバージン
日高先生と付き合う前まで、私達はあまりプライベートの話をしなかった。
彼から他愛のない事を訊かれたりはしたけれど、相手が目上のドクターだというのがあったから、私からは取るに足らないような事ですら尋ね難かった。
その上、日高先生は『家では滅多に食事をしないんだ』と何度か言っていて、いつも外食しているような素振りを見せていた。
恋人や既婚者がいれば、きっと家で食事をするだろう。
そんな風に思っていた私は、自然と日高先生は独身だと思い込まされていたのかもしれない。
「どっちにしろ、既婚者だって事を付き合っていた九ヶ月間も黙っていた時点で、故意でしょ」
「確かにその可能性はあるかもしれない……。でも……」
不謹慎だけれど、不満いっぱいの菜摘が私の為に怒ってくれている事に嬉しくなって微笑を零す。
「もういいの。今となってはわからない事だし、奥さんを傷付けていたのは事実だから」
「相変わらず真面目だね。奥さんに言ってやれば良かったのに、『既婚者だって知らなかった』って」
「今でもそんな事言おうなんて考えてないけど、どうせ信じて貰えなかったと思うよ」
「そうだろうね」
彼女は、共感するように苦笑いを浮かべた。
彼から他愛のない事を訊かれたりはしたけれど、相手が目上のドクターだというのがあったから、私からは取るに足らないような事ですら尋ね難かった。
その上、日高先生は『家では滅多に食事をしないんだ』と何度か言っていて、いつも外食しているような素振りを見せていた。
恋人や既婚者がいれば、きっと家で食事をするだろう。
そんな風に思っていた私は、自然と日高先生は独身だと思い込まされていたのかもしれない。
「どっちにしろ、既婚者だって事を付き合っていた九ヶ月間も黙っていた時点で、故意でしょ」
「確かにその可能性はあるかもしれない……。でも……」
不謹慎だけれど、不満いっぱいの菜摘が私の為に怒ってくれている事に嬉しくなって微笑を零す。
「もういいの。今となってはわからない事だし、奥さんを傷付けていたのは事実だから」
「相変わらず真面目だね。奥さんに言ってやれば良かったのに、『既婚者だって知らなかった』って」
「今でもそんな事言おうなんて考えてないけど、どうせ信じて貰えなかったと思うよ」
「そうだろうね」
彼女は、共感するように苦笑いを浮かべた。