ラストバージン
榛名さんとの事を話すのは、過去を打ち明けるよりもずっと簡単だった。
菜摘が真剣に話を聞いてくれていた事も、言葉がスラスラと出るキッカケになったのだと思う。


「話はわかった。でも、葵が悩んでる理由がわからないんだけど」


全てを話した私に、彼女が理解に苦しむというような顔をした後で複雑そうにしながらも笑った。


「むしろ、葵に好きな人が出来たって聞いてめちゃくちゃ嬉しいし、その人に告白されたって事に猛烈にテンションが上がってるんだけど。何を迷うの!?」


次第に興奮をあらわにしていった菜摘は、今にも身を乗り出しそうな勢いだった。


「そういえば、葵の恋ばなが聞けるのって、大学時代に付き合ってた中山(なかやま)君の時以来じゃない? あ、中山君って懐かしいね。一つ上の外大生だったっけ?」

「……よく覚えてるね」

「だって、結構長い付き合いだったでしょ? 確か、葵の家に遊びに行った時に会ったし」


懐かしげに頷いていた菜摘が、ハッとしたように私を見た。


「って、中山君の事はどうでもいいの! 今は、その高校教師の話でしょ!」

「中山君の事を出したのは、菜摘じゃない」


ため息混じりに返すと、彼女は大して気にもせずに口を開いた。

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