ラストバージン
母と姉に支度を任せる事を申し訳なく思いながらも、榛名さんを残して行くのが気掛かりで動けずにいると、彼がフッと微笑んだ。


「葵も行っておいでよ」

「え? でも……」

「僕の事は大丈夫だよ」


きっと、榛名さんなら大丈夫だろうとは思うけれど、やっぱり気になってしまう。


「葵ちゃん、行っておいでよ。僕達は男同士で楽しんでいるから。ね、お義父さん」

「あぁ、手伝ってやりなさい」


孝輔さんと父にも促され、ようやく心配が掻き消される。


「うん、わかった」

「私も行くー! 葵ちゃん、待って!」


私が立ち上がって居間を出ると、すぐに桃子が追い掛けて来た。
そのまま手を繋いでキッチンに行くと、母と姉が忙しそうにしていた。


「私達も手伝うよ」

「あら、ありがとう。でも、榛名さんはいいの?」

「うん。榛名さんが勧めてくれた事だから」

「そう。素敵な人ね」


フワリと笑った母に、照れ臭さを感じながらも頷く。


「この間頂いたお見合いの話は、お母さんから断っておくわ。それに……きっと、もう必要ないわね」


すると、母は心底安心したような笑みを浮かべていて、私は肯定を込めた笑顔を返した。

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