ラストバージン
「そうじゃないの……」


私は一度目の告白で紡がれた〝結婚〟だけは、白紙になってしまったものだと思い込んでいたのだ。


「最初に告白してくれた時、『結婚を前提に』って言ってくれた事は本当に嬉しかったから、決して忘れていた訳じゃないの……。でも、その時はまだ拓海は私の過去を知らなかったでしょ?」


間違っても名字で呼ばないように留意し、黙って話を聞いている榛名さんの瞳を真っ直ぐ見つめた。


「それに、私の過去を知った後で改めて告白をしてくれた時も付き合ってからも、結婚の話は一切しなかったじゃない?」


彼も私を真っ直ぐ見据えていて、どこか真剣な雰囲気になっている。


「私の過去を話した以上、いくら好きでいてくれても結婚はまた別の話になると思っていたから、まさか拓海がそんな風に考えてくれているなんて思ってもみなくて……。勝手に決め付けてしまって、本当にごめんなさい」


一言一句、しっかりと噛み締めるように紡いだ後で、一度視線を落として瞼を閉じた。


「でも、拓海が私との結婚を考えてくれているってわかった時、本当に嬉しかった」


そして、再び榛名さんの瞳を見つめながら話した私は、自分の気持ちがほんの少しでも伝わるように願いながら微笑んだ。

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