ラストバージン
少しの沈黙が訪れた後、榛名さんがため息をついた。


「……僕も言葉足らずだったね」


直後に後悔混じりに呟いた彼は、眉を寄せたまま微笑んだ。


「最初の告白で『結婚を前提に』って伝えていたし、この歳で恋人になるのなら結婚を意識して付き合っていくのが当たり前だと思い込んでいたから、言わなくてもわかってくれていると考えていたんだ」

「私だって、この三ヶ月間に結婚の二文字が頭を過った事はあったよ。でも……」

「うん、そうだよね」


私を制した榛名さんは、悩ましげな笑みを浮かべた。


「ごめん……」

「え?」


何に対する謝罪なのかわからない私に、バツが悪そうな微笑みが向けられた。


「ご両親に結婚の事を話した時に葵が驚いているのを見て、結婚を意識していたのは自分だけだったんだ、って思って……。ちょっと悔しかったんだ」


榛名さんが不満げだった理由を、ようやく理解する。


「それに、自分だけ舞い上がっていたのかと思うと、何だか寂しくなって……。ごめん」

「ううん、勝手に思い込んでいたのは私も同じだから……。ごめんね」

「いや、僕の方こそ……」


お互いに言葉足らずだった私達は、顔を見合わせて苦笑を零した。

< 312 / 318 >

この作品をシェア

pagetop