ラストバージン
先に運ばれて来たビールで乾杯をした時には、まだ重い気分のままだったけれど……。

「本当に美味しいです」

しばらくして目の前に置かれた湯葉を中心とした御膳を食べた後からは、その言葉が自然と何度も零れてすぐに肩の力が抜け、憂鬱だったのが嘘のように笑えていた。


だけど……。

「気に入って頂けたみたいで良かったです」

本当に嬉しそうに笑った高田さんに、一瞬にして罪悪感が芽生えた。


彼はとても気が利くし、話題も豊富で話すのも上手い。
決して押し付けがましい感じもなく、デザートまで勧めてくれた時もとてもスマートで、女性の扱いに慣れている事が見て取れた。


女性に困りそうにない高田さんが、婚活パーティーに参加していた事には疑問を感じるけれど……。今の私にとって気にするべき事は、間違ってもそんな事じゃない。


「そういえば、この間……」

「高田さん」


楽しそうに話題を提供してくれていた高田さんの声を意を決して遮ると、場の空気が張り詰めたような気がした。


「……結木さん?」


怪訝な表情をした彼は、敢えてそんな顔をしたのかと思う程に低い声音で、思わず姿勢を正すように背筋を伸ばしてしまった。

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