ラストバージン
「最初は二十九歳で年も近いし、何となくフィーリングが合うな〜くらいの気持ちだったんだ。初対面の時には、『名字が一文字違いだね』なんて言い合って、変に意気投合したりして。でも、何度か会っているうちに肩肘張らずに過ごせてる事に気付いてさ」


穏やかに微笑む菜摘に驚いたのは、彼女が男性との事を話す時にこんな表情を見せた事がなかったから。


「一緒にいて楽しいし、沈黙になっても苦痛じゃないし、変に気を遣わなくていいからわりとラクだし、趣味も合うしね」

「趣味って、テニス?」

「うん、慎吾(しんご)もテニスするんだ。高校と大学で硬式してて、今も社会人サークルに入ってるの。私も誘われて入ったんだ」


それから、菜摘が狡猾混じりな笑みを見せた。


「それに、公務員なんだよね。職場は市役所だし、安泰でしょ?」


彼女はわざとらしく職業を強調したけれど、きっと澤部さんがどんな職種だったとしても彼と付き合ったんじゃないかと思わせる程、幸せそうに微笑んでいた。
そんな親友を見る事が出来て嬉しいのにすぐに喜ぶ事が出来なかったのは、どうしてなのだろう。


戸惑いながも何とか笑みを繕って「おめでとう」と言えば、菜摘は心底嬉しそうに笑った。

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