黒愛−kuroai−
 


父親とも数回顔を合わせ、会話したことがある。


余所の家の夕食時に、エプロン姿でキッチンに立つ私を、父親はすんなり受け入れ笑ってくれた。





それから1時間後、玄関で物音がした。


リビングの扉が開き、柊也先輩が入って来る。



友達の家に“相談”しに行っていた彼は、いつもより帰宅が遅い。




「ただいまー。
いい匂い、腹減っ……」




制服姿の彼は、私を見て驚いた。


予想外の光景に、言葉を失い、固まっている。




4人掛け食卓テーブルには、ビーフシチューとグリーンサラダ、酒のつまみが数種類。


両親は赤ワインを飲み、赤ら顔で笑っている。



夕食に同席するのは、いる筈のない私。


エプロン姿で、楽しく会話し、ビーフシチューを食べていた。




「あ、柊也先輩お帰りなさい!
遅いから、先に食べてましたよ?」



椅子から立ち上がり、台所へ向かう。



「先輩、手洗いうがいして下さいね。
今、ビーフシチュー温め直しますから」




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