黒愛−kuroai−
話し掛けても返事はない。
それでもペラペラ話し続けていると、彼がピタリ足を止めた。
絡めていた腕を、力任せに解かれる。
「いい加減にしろっ!!」
急に怒り出す彼。
なぜ?
その理由に思い当たらず、
首を傾げる。
「言ったよな?
結婚なんて考えてないって。
何勝手に話し進めてんだよ!!」
苛立つ彼。
鋭い視線は真っすぐ私に向けられる。
でも私は気付かない。
睨む目付きを見ていないし、
彼の言葉も聞こえない。
民家の塀の上で黒猫が一匹、ジッとしていた。
それに気を逸らすことにする。
「ナ゙ー」と低く威嚇する声。
暗闇に潜む何かを見つめ、尻尾と耳をピンと立てる。
暗い夜道に光る目が綺麗だった。
黄緑色に輝く猫の目は、まるで宝石みたい……
睨みを利かせる彼に、笑顔を向けた。
「柊也先輩、猫の目って宝石みたいですね!
私、結婚指輪はペリドットの石がいいです。
あの猫の目みたいに黄緑色の宝石…
今度一緒に、指輪も選びに行きましょうね!」