黒愛−kuroai−
 


母が値踏みする視線を、彼に向ける。




「へぇ、随分イケメンな彼氏を捕まえたね」



「うん!
学校で1番カッコイイの」





頭から足先までジロジロ眺め、
母は聞いた。




「うちの子、激情型だから大変でしょ?」



「え…?」



「思い込むと、とんでもない事やるから気をつけてね。アハハッ」





余計なこと言うなと言いたいが、母は昔話を始めてしまう。



幼稚園時代、お気に入りの男の子の取り合いで、

ヒヨコ組のホノカちゃんに、石を投げつけ、眼鏡を割ったこと。



小学生時代は、生徒会長のカズマ君に付き纏い、怖がらせ、最終的には転校させてしまったこと。




黒い昔話に少し焦ったが、軽目の話し2つで止めてくれたので、何も問題ない。




柊也先輩の顔が青白く見えるのは、多分、月光のせい。


大好きな彼の首に腕を回し、引き寄せ、唇を合わせる。




「先輩、寒い中、送ってくれてありがとうございます!

もうすぐ一緒の家で暮らせるから、こんな手間はなくなりますネ」





私と母が家に入っても、彼は玄関前に佇んでいた。



遠くで、救急車のサイレンが鳴り響く。

その音でハッと我に返り、彼は逃げるように走り出す。




その姿を2階の窓から、
ジッと眺めていた……





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