黒愛−kuroai−
 


上擦る声…

冷汗の滲む額…

揺れる視線…




距離を一歩縮めると、先輩は壁伝いに、横に一歩ずれた。



ずれた方へ向きを変え、更に一歩近付くと、彼はまた横にずれる。




一歩、二歩、三歩…

とうとう、コーナーまで追い詰めた。

本棚に逃げ場を遮られ、彼は震えながら首を横に振る。




私達の間には、トレーに乗った紅茶。

幸せなカップに入り、温かい湯気を上らせていた。




「柊也先輩、紅茶をどうぞ」



「い…いらない…」





要らない訳ない。

そんなに青ざめ、寒そうに震えているのに。

体を温めた方がイイヨ…




カップを持ち、彼の唇に押し付けた。




「熱っ!」




叫んだ彼が、私を突き飛ばす。


紅茶もクッキーも床に零れ、マグカップは割れてしまった。



弾き飛ばされ、本棚に肩をぶつけた私。

その拍子に、棚上から“宝物入れ”が落ちた。



床に広がる紅茶の上に、中身が散らばってしまう。




ああ…残念…

いつまでも、大切にして置きたかったのに…

紅茶でビショビショだ…




零れた紅茶で濡れてしまったのは、

私手作り
“クソパンダマスコット”と、

何十枚もの、
清宮鈴奈の“イケナイ写真”




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