黒愛−kuroai−
 


眼鏡を押し上げ、白髪の医師が私を見る。



「ん?気分が悪いのかい?」



後ろに立つ看護師が、
「大丈夫?」と肩に触れる。




その手を払いのけ、立ち上がり、医師の胸倉を掴み上げた。




「妊娠してないだと…?
そんな訳あるかっ!!

いい加減な検査しやがって、くそヤブ医者野郎が……

金だけ取って、妊娠検査一つ出来ないの?

こんな悪徳病院、さっさと潰れちまえ!」





怒りをぶつけ、驚く医師と看護師を残し、診察室を飛び出した。



ザワザワしていた待合室は、シーンと静まり返っている。


妊婦達の興味本位な視線が、一斉に私に向けられた。




診療代も払わず、怒り心頭で病院を出た。


ヤブ医者のいるクソ産婦人科…

ネットに書き込んでやらなくちゃ…




 ◇


寒い外気の中、暫く歩き、やっと冷静さを取り戻す。


どうやら、行く病院を間違えたみたい。

ネットの評判は当てにならない物だ。



今度は別の産婦人科へ。

知り合いのお姉さんが、その病院で出産したと聞いた事がある。

今度は、まともな検査結果を貰えるだろう。



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