黒愛−kuroai−
はしゃぐ私。
嬉しくて彼に抱き着き、背中に腕を回す。
今度は、引きはがされたりしなかった。
顔面蒼白…浅い呼吸…
彼はまだ驚きの中で、抱き着く私にさえ、意識を向けられずにいた。
数分後、やっと柊也先輩が動き出す。
ゆっくりと私と距離を取り、目の前に土下座した。
震える声で、何とか言葉を口にする。
「頼む…下ろしてくれ…
一生のお願いだ……」
学校一カッコイイ彼。
いつも女子の視線を独り占めする彼。
白ジャージで、自信満々にラケットを操る彼。
プライド高い彼が、床に額を擦り付け、
「子供を下ろして」と懇願していた。
クスリ笑い、お腹を撫で、赤ちゃんに話し掛ける。
「おかしなこと言うパパですね〜
大丈夫でしゅよ。
ママは絶対アナタを産むからネ」
怯える目が私を見上げ、必死に訴える。
「無理だ!
父親にはなれないし、愛美とも結婚しない!
頼むって!下ろしてくれよ!」