黒愛−kuroai−
何て素敵な目で、見てくれるのだろう…
今、彼は、私しか見えていない。
学校も、テニスも、家族も…大切な存在を全て忘れ、
私だけを鋭く、獣のように、見詰めている。
嬉しくて、頭を打つけた痛みも忘れた。
笑い出すと、彼の鋭い瞳が益々鋭利になる。
「何、笑ってんだよ…
この状況、分かってないのか?
俺は結婚しない。子供も産ませない。
それで殺すって言うなら…先にお前を、殺してやる」
彼の両手が、私の首に掛けられた。
ゆっくりとその手に力が籠もる。
体格も力も、彼が上。
私は逃げられない……
いや、逃げる意識がなかった。
酸素が途切れる苦しみの中、尚も口元に笑みを浮かべ、
ポケットに手を入れ、ある物を取り出した。
それを彼の太ももに、力一杯突き立てる。
叫び声を上げ、彼は横に倒れた。
制服ズボンに穴が開き、流れ出る血で赤黒く染まって行く。
酸素を与えられ、肺を大きく上下させながら、私はゆっくり立ち上がる。
手に握るカッターの刃が、ヌラリ赤く、美しく光っていた。