黒愛−kuroai−
◇◇◇
一週間後、3月上旬。
今日は学校で卒業式が行われる。
在校生も参加だが、そんな面倒臭い行事は、もちろん欠席。
自分の部屋で鼻歌を歌いながら、長い黒髪に櫛を通していた。
試供品で貰った、高いリップグロスを塗る。
ナチュラルに、丁寧に、いつもより時間を掛けてメイクする。
“有終の美”
柊也先輩の言葉通り、最後はとびきり綺麗にしなくちゃネ。
この日のために用意した可愛いワンピースを着て、鏡の前でクルリ回り、ニッコリ笑ってみる。
その時、机の上のスマホが鳴り出した。
ショパンのピアノソナタ第2番。
『葬送』とタイトルが付くこの着信メロディは、柊也先輩から。
素敵なメロディを切断し、通話に出る。
「はい、愛美です!
柊也先輩、お早うございます!」
上機嫌に元気良く話す私と違い、彼の声は低く、浮かれた感じは微塵もない。
でも、落ち込んだり、怯えている雰囲気もない。
何かを決意した声…
揺るぎない黒い声…
そんな感じを受けた。