黒愛−kuroai−
嬉しくて楽しくて、はしゃぎながら、沢山の話しをした。
彼は笑顔で相槌を打ち、肩を抱き寄せ、時々キスしてくる。
この車両は、空いているが、無人ではない。
向かいにも、隣にも人が座っている。
他の乗客達は寝たふりして、イチャつく私達を無視していた。
乗客が一人二人と減って行き、電車は軋む音を響かせ、終点に着いた。
寂れたホームに下りる。
約1時間半の乗車で、固まった筋肉を伸ばし、灰色雲に向け、大きく伸び上がった。
ここは、聞いたことない名前の駅。
駅舎は古く、改札も一つしかない。
暇そうな駅員が、ガラス窓からチラリこっちを見て、すぐに目線を文庫本に戻した。
小さな待合室のベンチには、背中を丸めた老婆がいる。
何もない宙を撫でながら、ブツブツと独り言を喋り続けていた。