黒愛−kuroai−
柊也先輩の選んだ心中場所は、海。
切り立つ崖の上から、手を繋ぎ、一緒に飛び下りようと言われた。
「どう?」と彼は聞く。
口元が不自然に吊り上がり、白目は充血し始め、ピンク色。
私は両手をパチンと合わせ、「素敵です!」と賛成した。
2ヶ月前に図書室で借りた本『ノサップ岬心中』を思い出した。
愛し合う2人が永遠を誓い、崖から飛び下り、海に消える…
美しく華々しい最後が素敵で、憧れた。
民家が完全に途切れ、道路は陰気臭い雑木林の中を進む。
車線のない狭い一本道。
時折大型車が通るので、彼と横並びに歩けなかった。
私が前で、彼が後ろ。
前後に連なり歩きながら、後ろの彼に、引っ切りなしに話しかけた。
「柊也先輩、遠足みたいで楽しいですね!」
「そう?喜んで貰えて良かった」
「先輩!人生の最後に何食べました?」
「普通の朝飯。
トーストとハムエッグとサラダ」
「えー?普通過ぎですよー。
私は朝から、ステーキ食べました!
昨日お肉屋さんで、高級和牛、買っておいたんです。
お母さんにビックリされちゃった!ウフフッ」