逢いたい~桜に還る想い~

    ★    ★


『───ご懐妊でございます』



………ようやく抜け出したと思っていた地獄から、

メキメキと黒い魔物の触手が伸びてきて、私の身体をじっとりと絡めとる。



久我家での生活が、別に幸せな訳じゃない。
幸せになんてなれる訳ない。

死にたくても死なせてもらえず、監視される日々。

ただ息をして、そこに“いる”だけ。


なのに───


愛していない男の許に、政略結婚の駒として嫁がされても、

生ける屍のように、静かに息を殺していたとしても、

簡単には私を、“母殺し”への贖罪から、───父の狂気から、

………逃がさないというの………




『おめでとうございます。どうぞ、御身を大切に』


………やめて。大切なんかじゃない。


『晴虎様、此度はまことにおめでとうございます』


………この男も身に覚えのないことに、さぞかし困惑しているだろう。


それとも、『不貞だ』と私を蔑む?

厄介者でしかない私の裏切りに、憤慨する?


ならば───いっそ、私を殺してくれればいいのに。



だって、この身に宿したのは────………



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