この愛に抱かれて
そして右手で強く指輪を握り締めると静かに目を閉じた。


耳元を吹き抜ける風の音だけが絶え間なく鳴り響いていた。


もう誰を恨んでも仕方が無い。


諦めの思いだけが頭の中にあった。



すべてに疲れ果て、明日という未来さえ見えなかった。


自分の居場所が見つからないばかりか、存在意義すらわからなくなっていた今の彼女に希望など無かった。



目を開けた響子は、その先に広がる薄暗い闇をじっと見つめた。


そしてむくりと立ち上がると、波しぶきの音が聞こえる方へ向かって、ゆっくりと歩き出した。



ギュッ!



歩き始めたとき、誰かが響子の右腕を強く掴んだ。



ハッ!



振り返った響子の目の前に男が立っていた。


響子は気を失ってその場に崩れ落ちた。
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