恋するほど   熱くなる
アラン・ストーンは英国ロイヤル・バレエ団を辞めて独自の舞踏団を所有していた。

本人も舞台に立つが実業家としても成功しているらしいと聞いた。

「やっぱりロイヤル・バレエ団だと身動きできないのよ。」

「男として自由に稼ぎたいよな。」

「そうさ、彼の判断は正しいね。」

招待客は毎年ここに来ている常連ばかりのようだった。

「美莉、君は日本人だろ?」

「はい、そうです。」

「いいよな。君の黒い瞳にゾクッとくるよ。男なら絶対イチコロさ。」

「そうですか。私は皆さんのブルーやグリーンの瞳に憧れますけど。」

「もう見飽きているよ。」

「そういうものですか。」

「そうだよ。僕達にとっては珍しくも何ともないことさ。」

そう言った彼と彼の友人は

冬はトレッキング、夏はスカイダイビングに来ているそうだ。

「美莉はライターだって聞いたけど、他には何かやるのかい?」

「少し踊れるだけです。」

「へぇ、ダンサーってこと?」

「それを言うなら、バレリーナだろ?日本のバレエ団にいるのかい?」

「いいえ、どこにも所属していません。」

「ふ~ん、フリーか。アランにリードしてもらえば?」

「ここだけの話だよ。彼に手を取ってリードされると大抵の女はイッちまうって噂らしい。」

「美莉にそんなことを教えるなよ。バレたらヤバいよ。」

「私のことかな?フレッド?キース?」

「いや、美莉がバレエを踊るって聞いたんだ。それだけだよ。」

「本当か?美莉はダンサーなのか?」

「はい。プロではありませんが。」

私はアランから質問責めにされた。

荒木さんはあっちのテーブルで有閑マダム達につかまっていた。

熟女に囲まれて荒木さんも質問責めのようだ。

「美莉、よかったら明日ランチを一緒にどうかな?荒木に了解を取るから心配しなくてもいいよ。」

「ありがとう、アラン。もう少しバレエのお話が聞きたいです。」

私はアランと筋肉のほぐし方を話した。

彼はヨガを取り入れたストレッチ法でのリラクシゼーションが一番効くと言っていた。

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