さみしがりやのホットミルク
光の部屋にあるインターホンが鳴ったのは、その日の夕方のことだった。



『光さま、お部屋にいらっしゃいますか?』

「いるよ、どーかした?」



この馬鹿みたいにでかい家は、ほとんどの部屋に専用のインターホンがついている。

画面に映ったお手伝いさんは、長年日比野家に仕えている、杉山さんという50代くらいの女性で。何度かこの家に来たことがある俺にとっても、顔見知りの人だ。

そのお手伝いさんに向かって光が答えると、どこか困ったような声と表情で、杉山さんはさらに言葉を続ける。



『あの……晴臣さんに、お客様です』

「え? 晴臣に?」

「……ッ、」



ぎくりと、嫌な予感がした。

俺は座っていたカーペットから立ち上がって、インターホンの前に向かう。

気付いた杉山さんが、戸惑ったように、俺を見つめる。



『はい。……伊月さまとおっしゃる、男性の方です』
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