さみしがりやのホットミルク
#5.ふたりの未来

「困るのよねぇ、いろいろと」

「坊っちゃんが家を出てから、本当はずっと、動向を誰かしらが監視してたんです。組長の指示で、接触はしないようにしてたんですけど」

「……へぇ、そう」



ハンドルを握ったままの伊月のせりふに、俺は後部座席の端で頬杖をつき、窓の外を見ながら生返事をする。

……やっぱり、俺の居場所は、とっくに知られていたのか。それでも接触を避けた父さんの真意は、よくわからないけれど。


だけど、このタイミングで俺を迎えに来たっていうのは、やっぱり──。



「ちなみに、坊っちゃんが佳柄さんの家を出たのを確認したから迎えに行った、というわけではありません。あれから1週間経ちますし、まあ、そろそろ連れ戻すかと、そういうことです」

「……ふぅん」



……ムカつく。この、人の頭の中を先回りして読むような話し方は、この男の特技というか、嫌なところだ。

俺は再び押し黙り、ただ、見慣れた道を通っていく車の中から、窓の外を眺めていた。
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