さみしがりやのホットミルク
古いけれど馬鹿みたいに広い、日本家屋。

家に着くとまず、数人の組員たちに出迎えられた。

みんなそれぞれに、「坊っちゃんお久しぶりです……!」「心配しました」などと声を掛けてくる。

なぜかうちに仕えてるお手伝いさんのおばちゃんたちまで出てきていて、俺は苦笑いしながら、適当に返事をしつつ家の中に入った。



「坊っちゃんいなくなってから、あそこにいた奴らみんなずっと心配してたんですよ。好かれてますねぇ」



俺の荷物を通りすがりの組員に押しつけながら、伊月はそう話す。

どこかくすぐったいような、申し訳ないような微妙な気持ちで、俺は肩をすくめた。



「……そーかよ」

「あ、とりあえずは組長の部屋へ行ってください。後で姐さんが来ます」

「……わかった」



言葉を返しはするけれど、まるでもう逃がすまいとするようにぴったりと後ろをついてくる伊月に、うんざりする。

伊月に指示されて、俺は緊張しながら、父さんの部屋へと続く廊下を歩いた。
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