さみしがりやのホットミルク
すらりと、スローモーションのように、障子が開かれるのを見ていた。

廊下から姿を現したのは、艶やかだけれど派手ではない、朱色の着物を身に纏った、線の細い美女。



「晴臣、元気そうねぇ」

「……母さん、」



つぶやく俺の声が聞こえているのかいないのか、伊月を伴って部屋に入ってきた母さんは、俺の目の前に腰をおろした。

伊月は再び、俺の斜め後ろについて。母さんがゆったりとした動作で、時代劇に出てくる殿様のごとく、脇息にひじを置いた。



「あなたがここから逃げ出して、1週間くらいかしら? 親子の対面としては、久しぶりね」

「………」



目の前の人物にはっきりと『ここから逃げ出した』と口にされ、思わず、ひざの上の手を握りしめてぐっとあごを引く。

だけどもふっとひとつ、息をつくと。

俺は覚悟を持って、母さんを鋭く見据えた。
< 120 / 144 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop