さみしがりやのホットミルク
「まさか……俺を嵌めた、のか?」

「嵌めただなんて人聞きの悪い。ちょおっと真実を歪曲した話を聞かせて、ここまで連れて来ただけですよ」

「それを嵌めたって言うんだよ!!」



しれっと答える伊月に、俺は思わず声を荒らげてしまう。

ふふふ、と母さんが袖で口元を隠しながら笑って、ひらひらと片手を振った。



「やぁね、晴臣。いくらなんでも、家のゴタゴタを理由にカタギの女の子に手を出すわけないでしょ? 特に礼儀やら信条をことさら重んじる、ウチみたいなのが」

「……ッ、」

「お馬鹿さん。頭に血ぃ昇って、そこまで考えが至らないなんて」



……言われてみれば、たしかに、そうかもしれないけど。

だけどあんな様子の佳柄を目にしたら、冷静な判断なんて、できるわけ……。



「……佳柄さんは、自分の方から、こちらに協力すると申し出てくれました」

「え、」



伊月の言葉に、俺はノートパソコンの方へと視線を向けた。

画面の中の佳柄の両脇には、どこからか現れたうちの組のやつらがふたりいて。大柄なからだに似合わない丁寧さで、手足のロープをほどいてやっている。
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