さみしがりやのホットミルク
……はず、なのに。



「(眠れねえ……)」



心の中でつぶやきながら、横になったままでぱちりとまぶたを開ける。

暗闇に目が慣れた頃、壁に掛けられた時計に視線を向けてみれば、時刻は午前2時をまわったあたり。

俺はそっと、上半身を起こした。



「………」 



ベッドの佳柄にふと目をやると、彼女はこちらに顔を向けるかたちで、すぅすぅと寝息をたてている。

その表情を見ていたら何とも言えない気持ちになって、俺はそっと、息を吐いた。


……俺は、自分がしでかしたキス未遂のことばっか気になって眠れねぇってのに……気持ちよさそうに寝てくれるな、コイツは。

あんなんたいしたことじゃないんかい、おまえにとっては。……別に、俺だって初めてとかじゃないけど。

つーか今さら思ったけど、コイツって彼氏とかいないんだよな? いたらさすがに、俺みたいなやつ拾ったりしないよな?

マジでほんと、佳柄には自己防衛本能というものがなさすぎる……。
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