さみしがりやのホットミルク
「おかあさんは、びょういんにいるの。だからいつもは、いっしょにいれないの」

「……入院中、ってことですか」



後ろに立つ伊月が、ぽつりとつぶやいた。

俺は少しだけ考えてから、また、口を開く。



「その、おかあさんがいるびょういんって、どこだ?」

「ちょ、坊っちゃん……」



背後から聞こえる声は無視して、じっと女の子を見つめる。

女の子は目をぱちぱちさせてから、「えっと、」と話し始めた。



「あのね、ながーい、さかの上なの。さかのとちゅうには、パンやさんがあるの」

「伊月?」

「……それはおそらく、南雲総合病院ですねぇ。ここからは、車で15分ほどでしょう」



振り返った俺の魂胆をすでにわかっているような、諦めのまじった声音で、伊月が言う。

俺はポンと、目の前の女の子の頭に手を乗せた。



「わかった。おかあさんのいるびょういんまで、つれてってやる」

「えっ」

「……やっぱり……」



予想通り聞こえた伊月のため息はガン無視して、女の子を立ち上がらせる。

ハザードをつけたクラウンのところまで連れてくると、そのまま女の子を後部座席の自分のとなりに座らせた。
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