さみしがりやのホットミルク
そうして、車が再び走り出してから5分ほどが経った頃。

ぽすん、と左肩に重みを感じ、俺は首だけを動かしてとなりを確認した。



「……すぅ、」

「……ねてる……」


 
人の肩にもたれ、すよすよ気持ちよさげな寝息をたてる女の子に、若干呆れたような視線を向ける。

するとバックミラー越しに、運転中の伊月がこちらを確認した。



「ああ、泣き疲れて寝てしまったんですねぇ。坊っちゃん、その子も坊っちゃんの肩も辛いでしょうから、ひざの上に頭を乗せてさしあげてください」

「……わかった」



伊月に言われて、そうっと女の子を起こさないように、その小さな頭を自分のひざに乗せてあげる。

女の子は体勢が変わっても、相変わらず穏やかな寝息をたてていて。



「(……いもうと、って、こんなかんじなのかな……)」



そっと、こわれものを扱うように、おずおずとその髪を撫でる。

俺のひざの上で、うさぎを抱いたまま、まるくなって眠る女の子。その閉じたまぶたは、たくさん泣いたせいか赤くなってしまっている。



「──、」



それを、見ていたら。きゅっと胸が切なくなるような、なんともいえない想いが、こみ上げてきて。
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