恋しくて、哀しくて
学が眠り、夫婦2人の時間がやってきた。こたつの上のみかんを食べながら、謙一さんはニュースを観ていた。私は、その脇に座り、同じようにニュースを観ていた。



「…寝ようか?」



謙一さんの『寝ようか』は、『今夜、どう?』と言う誘いだった。コクンと頷くと、テレビを消し、私に手を差し伸べる。その手を掴むと『OK』のサイン。



夫婦間でいつの間にかそんな暗号めいたものが生まれていた。



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