恋しくて、哀しくて
『水曜日の11時、駅のベーカリーでお待ちしています』



ずいぶんと自分勝手だな…と思いながら、待ち合わせ時間にベーカリーへと向かった。



ベーカリー内には飲食スペースがあった。奥の席に彼は座っていた。私は、人目を気にしつつ、ニット帽を深めにかぶり、マフラーで口を覆うようにして、彼に近付いた。


「こんにちは…」



私が小さな声をかけると彼は満面の笑みを浮かべた。



とても人を騙せるような感じではなかった。



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