やばい、可愛すぎ。


「……ほら、帰るよ」


ゆりが小さく頷く。

ふらふらとした足取りでスリッパをはくと、うつむいたまま俺の後ろについてくる。



「……」


「……」



会話もなく、ゆりは微妙な距離を保ちながら廊下を歩いて行く。


何を言えば、いいんだろう。


何を言ったら、いいんだろう。


ゆりに何を話したら───いいんだろう。


何度も考えるけれど、歩くたびにほろほろ消えていく。

ついには、教室についてしまった。

ドアを開けると、閑散とした夕暮れに染まる教室の眩しさに、目を細める。


ぼーっと窓の外を見ていると、後ろからがた、と鞄と机がこすれる音がこえた。




……言うなら、いまだ。

今しか、ない。

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